山本周五郎(やまもとしゅうごろう) 男があんまりできすぎるのもげびたものだ

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人間は幸福にも不幸にもすぐ馴れるものさ、いまにもっと幸福を望むようになるよ

 

誰にも責任はないし、誰を不幸にもしたくない、おれの考えたことはそれだけだ

 

あの人たちには今日しかない、自分自身の明日のことがわからない、今いっしょにいることは信じられるが、また会えるという望みは、もつことができないのである。

 

その人は歩きだした。その人はもう歩きだしてもいい、と思ったのである。静かな歩きぶりで、前方をみつめたまま、その人はゆっくりと歩きだした。

 

権力とは貪婪なものだ。必要があればもとより、たとえ必要がなくとも、手に入れることができると思えば、容赦なく手に入れる、権力はどんなに肥え太っても、決して飽きるということはない。

 

この闇夜には灯が一つあればいい、だがわれわれにはその一つの灯さえもない

 

人を狂気にさせるほどの恋も、いつかは冷えるときが来る、恋を冷えないままにしておくような薪はない

 

そんなことは徒労だというだろう、おれ自身、これまでやって来たことを思い返してみると、殆んど徒労に終っているものが多い

 

暇に見えて効果のある仕事もあり、徒労のようにみえながら、それを持続し積み重ねることによって効果のあらわれる仕事もある。

 

初めはごく小さくて平凡にみえる、誰でも気がつくが、それが事業になるとは思えない、へ、あんなものがなんだっていうくらいの仕事なんだな、そのうちにこっちはじりじりと手を拡げていって、世間のやつらが気がつくじぶんには、大事業に発展していて手が出せない、大資本で吸収しようにも、あまりに発展しすぎているので、つい二の足を踏んでしまう、という種類のものなんだ

 

金でも物でも、使えば減るか無くなってしまう、形のある物はいつか必ず無くなってしまうのだ。大切なのは減りもせず無くすこともできないものだ。人によってそれぞれ違うけれど、みつけようとすれば誰にでも、一つだけはそういうものがある筈だ。