【大衆の美】柳宗悦(やなぎむねよし) 人は生れながらに人を恋している

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誰も異常な世界から、異常なものが生れてくると考えている。だが彼は私達に何を告げているのか。通常なものから異常な狂が出ることを明示している。あの普通とか平凡とか蔑まれるその世界に、かえって狂が宿されていることを物語っている。

 

 

誰も異常な世界から、異常なものが生れてくると考えています。だが民藝品は私達に何を告げているでしょうか。通常なものから異常な美が出ることを明示してくれるのです。あの普通とか平凡とか蔑まれるその世界に、かえって美が宿されていることを物語ってくれるのです。

 

 

あの平凡な世界、普通の世界、多数の世界、公の世界、誰も独占することのない共有のその世界、かかるものに美が宿るとは幸福な報せではないでしょうか。否、かかる世界にのみ高い工藝の美が現れるとは、偉大な一つの福音ではないでしょうか。

 

 

吾々はもっと「平」の世界について、深く思慮を廻らせてよい。「平の心」は要するに自在心に他ならぬのである。これを「無碍心」といってもよい。

 

 

真に美しいものを選ぼうとするなら、むしろあらゆる立場を越えねばなりません。そうしてものそのものを直接に見ねばなりません。立場は一種の色眼鏡なのです。

 

 

この世にはどれだけ多く、許し得ない矛盾が矛盾のままに行われているであろう。

 

 

塵に埋もれた暗い場所から、ここに一つの新しい美の世界が展開せられた。それは誰も知る世界であり乍ら、誰も見なかつた世界である。

 

 

作は無慾である。仕へるためであつて名を成すためではない。

 

 

わけても和紙には日本の姿が見える。清くて温くて強くて、而も味ひに溢れる風情が見える。もとより和紙と云つても一様ではない。だがどんな和紙も、まじり気のないものである限りは、どこまでも日本の姿である。

 

 

紙には私がない。そのせいか誰だとてこの世界には憎みが有てない。そこには親まれる性情が宿る。顧みない人は無関心であらうが、近づく者は、離れ難い結縁を感じるであらう。