思ひつつ寝ればや人の見えつらむ 夢と知りせば覚めざらましを
これを聞いて近所のものは、二人が出歩くのは、
最初のその日に限らず、過ぎ去った昔の夢の迹を辿るのであろうと察した。
科学者への警告。
君は人間の存在理由を無視するところから出発するものだ。その企ては勇ましい。
然しながら君は人間の夢を全くさまし切ることは出来ないだらう。
何故ならば、人間の夢をさまし切つた時、そこにはもう人間はゐないから。
人間から見た人間の歴史、ぼくがなんとか目を覚ましたいと思ってる悪夢なんです。
夢と現実とを一緒に見ているのだよ君は……今……
この世の名殘り、夜も名殘り。
死にゝ行く身をたとふればあだしが原の道の霜。
一足づつに消えて行く夢の夢こそ哀れなれ。