倉田百三(くらたひゃくぞう) 恋は遊びでもなく楽しみでもない、生命のやみがたき要求であり、燃焼である
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青春は短い。宝石のごとくにしてそれを惜しめ。俗卑と凡雑と低吝とのいやしくもこれに入り込むことを拒み、その想いを偉いならしめ、その夢を清からしめよ。夢見ることをやめたとき、その青春は終わるのである。
暗い暗い、気味悪く冷たい、吐く気息も切ない、混沌迷瞑、漠として極むべからざる雰囲気の中において、あるとき、ある処に、光明を包んだ、艶消しの黄金色の紅が湧然として輝いた。
私は恋愛を迷信する。この迷信とともに生きともに滅びたい。この迷信の滅びるとき私は自滅するほかはない。ああ迷信か死か。真に生きんとするものはこの両者の一を肯定することに怯懦であってはならない。
私は人生に二つの最大害悪があると思う。一つは肉交しなければ子供のできないことと、他の一つは殺生しなければ生きてゆけないことである。
私はあの作において、人間の種々の貴き「道」について語り得ていることは私のひそかに恃たのみとしているところではあるが、それは「道」を説くために書いたのではなく、生活に溶かされたる「道」の体験を書いたのである。
自ら問いを持ち、その問いが真摯にして切実なものであるならば、その問いに対する解答の態度が同様なものである書物を好むであろう。