【花の外見だけでなく内面も知る】三好達治(みよしたつじ) 花ばかりがこの世で私に美しい


アメシストが世界と日本の詩人を適当に紹介する Part12 室生犀星と三好達治

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雪はふる 雪はふる 聲もなくふる雪は 私の窗の半ばを埋める
私の胸を波だてた それらの希望はどこへ行つたか ――また今宵
それらの思出もとび去りゆく 夜空のかぎり 雪はふる 雪はふる
雪は思出のやうにふる 雪は思出のやうにふる また忘却のやうにもふる

 

ああその
お前と別れる日のために
今日私はお前を謳ひ
今日私はお前と遊ぶ
お前の渚に
私は今日お前と遊ぶ

 

池のほとりに柿の木あり
幹かたむきて 水古りし 堤の上を
ゆきかよふ路もなつかし

 

かいつぶり かいつぶり そうれ頭に火がついた
私たちの歌に應へて かいつぶりは水に沈む
それは旱魃の夏だつた ただそれだけのことだつた
かいつぶり かいつぶり かいつぶりのゐない日もあつた

 

しみじみと
世のみじかきを思ふかな
こころしづかに
あめつちを見む

 

夜の園生の 寂寞に鯉が跳ねる
何事か覺束なげに 私の心は歩みをとめる
さうして耳を澄す この平凡な夜の 感慨に
何でもない 私の心よ 行くがいい お前の路を

 

昨日はどこにもありません
そこにあなたの立つてゐた
そこにあなたの笑つてゐた
昨日はどこにもありません