織田作之助(おださくのすけ) 織田作死んでカレーライスをのこす(自由軒 難波本店 名物カレー)



道なき道は、ヴァイオリニストを目指す娘とおとんの物語です。


天才……? 莫迦莫迦しい。天才じゃありません。努力です。訓練です。私はもう少しでこの子を殺してしまうところでした。それほど乱暴な稽古をやったのです。ところが、この子は運よく死ななかっただけです。天才じゃありません。寿命があったんですよ。それだけです


凍てついた夜の底を白い風が白く走り、雨戸を敲くのは寒さの音である。厠に立つと、窓硝子に庭の木の枝の影が激しく揺れ、師走の風であった。


一日の時間を短いと思ったことも、また長いと思ったこともない。終日牛のように働いて、泣きたい時に泣いた。人に隠れてこっそり泣くというのでなく、涙の出るのがたゞ訳もなく悲しいという泣き方をした。


「銀が泣いてゐる。」といふ人である。――ああ、悪い銀を打ちました、進むに進めず、引くに引かれず、ああ、ほんまにえらい所へ打たれてしもたと銀が泣いてゐる。


見合いなんか一生のうちに一度すれば良いことだ。


そんなことまでいちいち気をつけて偉くならんといかんのか


顔も洗わずに結婚式を挙げるのは、君ぐらいのものだ。まアいい。さア行こう


人生五十年の貧しい経験よりもアンナカレーニナの百頁を読む方がどれだけわれわれの人生を豊富にするかも知れない