北村透谷(きたむらとうこく) 茜さす世界で君と詠う(デザインなんて適当でいいから!!)
一個人の間には復讐なり。国民と国民の間には戦争なり。
復讐の時代は漸く過ぎて、而して戦争も亦た漸く少なからんとす。
宗教の希望は一個人の復讐を絶つと共に、
国民間の戦争を断たんとするにあるべし。
「死」は其塲かぎりのものにあらず、
死の後に何か心地よからぬことありと思ふは彼の思想なり。
「死」は最後のものにして、
残るは唯だ形骸のみとするは我が思想なり。
此点に於て彼我大なる差違あり。
人間は到底枯燥したるものにあらず。
宇宙は到底無味の者にあらず。
一輪の花も詳に之を察すれば、万古の思あるべし。
造化は常久不変なれども、之に対する人間の心は千々に異なるなり。
天下に極めて無言なる者あり、山岳之なり、
然れども彼は絶大の雄弁家なり、
若し言の有無を以て弁の有無を争はゞ、
凡ての自然は極めて憫れむべき唖児なるべし。
われは花なき邦に生れて富める人とならんよりも、
花ある邦に生れて貧しき世を送らん事を楽しむ。
利欲の為ではなく、名誉の為ではなく、
迷信の為ではなく、また他の誤謬がある為ではなく、
この殺人の罪を犯す。
世界に普通には存在せず、しかも普通の理由によってである。
これを寫すのは極めて難しく、心して読むべきである。