【屑の中の屑】罪人と共に苦しみ、拷問官と共に面白がる
ドストエフスキーはどんな思想家が与えてくれるものよりも、多くのものを私に与えてくれる。ガウスよりも多くのものを与えてくれる。
予は試みに、文学書であなたの耽読されるものは何ですかと問うたところ、それは『カラマゾフの兄弟』であると答えた。
ドストエフスキーの作品を読むと、私は深い満足感を覚える。
私は毎年彼の作品を読み返している。
ドストエフスキーは、芸術家なら誰もが、その技法 人間理解 共感能力において、可能ならば自分と比べてみたいと思う、そういう作家の一人である。
単語や句の反復、憑かれたような語調、
百パーセント陳腐な一つ一つの言葉、俗悪な街頭演説的雄弁などが、
ドストエフスキーの文体を構成する、諸要素の特徴である。
殺人者と淫売婦が永遠の書を読んでいる、なんというナンセンスだ。
それは安っぽい文学的トリックであって、偉大な文学の情念や敬虔な心ではない。
ロゴージンは三人の中で一番正常な人物であるから、
やがてこの状態に耐えきれなくなり、ナスターシャを殺す。
ドストエフスキーが作り上げたこの若い思想家は、
世界の救済と革新を目指す最高のヒューマニズムのためでなければ、
犠牲を許容しない。
ヴァシリー・グロスマン