【スペインの文豪】ミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』 見果てぬ夢を追いかけて


 

 

 

当時スペインは、反宗教改革の嵐の中にありました。

 

異端審問所の最も厳しかった頃であり、

 

裁きという名の拷問、そして火刑に処せられる。

 

言いたいことを直接的に表現することは不可能でした。

 

また当時スペインでは、騎士道物語が流行していました。

 

騎士道物語は、騎士が見知らぬ土地を冒険し、

 

美しい姫の為に住民達を苦しめる悪を倒し、

 

王に認められるというものです。

 

簡単に言えばドラゴンクエストファイアーエムブレムのようなものと考えて下さい。

 

そこでセルバンテスは考えた。

 

騎士道物語のパロディとして書けば良い!

 

騎士道物語を題材にして、言いたいことを間接的に表現するのである。

 

そうすれば、異端審問の拷問から逃れることができ、

 

身の安全が約束される。

 

結果として『ドン・キホーテ』は、

 

騎士道物語を終わらし、非難しかつ称賛することとなった。

 

 

世界の遍歴に精神を費やし、

 

快楽を求めずに苦難の道を経て、

 

優れた人々は不朽の座に昇ると申すことが、

 

もしや、無駄な仕事、無益な時間の浪費であるかな?

 

もし、騎士や歴々や高潔な人士や高貴な生まれの方が、

 

私を愚か者と見られたら、

 

私はこれを取り返しのつかぬ侮辱と心得ましょう。

 

しかし、騎士の道に入ったことも踏んだこともない学生や教師達が、

 

私を愚か者と思ったところで、私は痛くも痒くもない。

 

私は騎士であって、

 

もし神が嘉し給うならば、騎士として果てる覚悟である。

 

ある者らは大それた野心の広野を行き、

 

ある者らは卑屈な卑しい追従の野を行き、

 

ある者らは偽りの偽善を行き、

 

またある者らは真の宗教のそれをゆく。

 

だが、私は自らの宿命に導かれて、

 

遍歴の騎士道の隘路を行くものであって、

 

その本分に従って金銭を蔑み、名誉を重んずる者である。